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i地図通信とは、既にご案内を見て頂いていると思いますが、地形測量技術と関連情報を無料で配信するメールマガジンです。詳しくは、i地図通信の申し込み要領をご覧願います。
このページは、i地図通信に興味のある方に、i地図通信を受信される判断材料を提供するために、不承不承、筆者の経歴を記載するとともに、受信者との対話を通じて地形測量技術が飛躍することを期待して作成しています。
1959年11月12日(水)、熊本県阿蘇郡高森町生まれ。
国立八代工業高等専門学校(いわゆる高専、現 熊本工業高等学校八代キャンパス)の土木建築工学科で写真測量を専攻。特段の思いがあったわけでもなく、熱心な学生でもなく、今思えば高専で身につけられた測量技術は誤差の概念ぐらいでした。
長じて無茶な挑戦でしたが、東京大学工学部清水英範教授(当時)の指導により『空中写真測量による地図情報の図化と編集の在り方』の研究で論文博士の学位を授与されます。清水英範教授からは、研究方法(博士としての心構え)のみならず、真理の探求、真の知恵に到達するための思考方法を学ばせてもらいました。指導は、見かけ上はだめ出しでしたが、図化とは何か、編集とは何か、さらに無知の知、いわゆる不知の覚醒であり、これにより少しは写真測量を語れるようになった気がします。
資格は、今は国家資格である測量士と技術士(応用理学、総合技術監理)、日本測量協会認定資格である空間情報総括監理技術者のみを提示しています。
測量士は業務独占資格で、基本測量と公共測量に必須となりますが、民間資格は経験的に身につけた知識を整理するのに役立つので、それなりに持っています。その中でも日本測量協会地理空間情報専門技術認定資格写真測量1級は、年に一人か二人しか合格していなかった中、29歳で取得できたのは誇りで、少ない実績で基本測量の主任技師ができ、成長を早めてくれたと感謝しています。技術士は、試験官を務めたことがある会社の先輩に40歳を超えないと与えられないといわれながらも37歳で合格しましたが、今では忸怩たる思いを抱えています。技術者としての最高の資格だといわれて志したのですが、長じて法的には測量士との優劣はないことに気付き、測量でも測量士では戦っていなかったことに恥じ入っているのです。
最初に就職したのは、区画整理を伸ばしていた中堅の測量会社でした。大手では通用しないと考えたのが就職の理由でしたが、後で世間と測量業界では会社規模の尺度が大きく違うことを知りました。
最初の会社は、少しお金が貯まった2年後に退職し、自分の可能性を模索していましたが、病気を患って継続が困難になり二つ目の会社に再就職しました。二つ目の会社は大手の一角で、海外作業を希望して入社しました。ただ、海外作業が常時あるわけではなく、技術力も経験も少なく、国内で航測図化しながら東南アジアに時々出張することからの出発でした。
そのような中、航測図化は、導入されたばかりの解析図化機で実現可能となった送電線調査のための測定にも携わることになります。このとき測定後の解析処理ソフトを整理し、自動化を飛躍させたことが理由と思いますが、隣の部署で200%もの赤字を出して苦しんでいた国内初の本格的な都市計画図のディジタルマッピングを任されることになり、数値地図課が設立されます。当時はディジタル化の黎明期で、外部に協力を求めることはできず、協力者を社内に集め、システム開発と作業の両方をになう過酷な環境で戦い続けました。
社内で測量系としてははじめて技術士を取得したことが評価されたのでしょう空中三角測量とリモートセンシングの部隊の指揮も執ることになります。ただ、これは長く続きません。突然、別の事業部を欲した世界に名高い企業に会社が売却され、業績は決して良くありませんでしたが不動産にも手を出さず、上場も視野に入っていた会社が、一転経営危機となって大リストラが行われ、給与体系も大幅に見直されました。その中で一人しかいないSE(Special Engineer)職と自分の名前を冠した研究室を与えられましたが、購入したら付いてきたという我々の事業部は新たな技術の導入や商品への挑戦は疎外されました。
この状況を熟慮し、業界活動も活発に行っていたため、業界に貢献できるよう公益法人に転職し、たいしたことはできないまま 定年という区切りに、子供達も独立していたこともあり、これまで培ってきた地形測量技術を無料で配信する事業(i地図通信)を始めることにしました。
二つ目の会社に就職した時に、所属部の部長の鞄持ちをさせられたこともあり、業界活動も活発に行うことになります。日本写真測量学会では事務局長を2期務め、今も理事は務めています。航測会社が主な会員である日本測量調査技術協会(測技協)では、航測に関する部門の長を8年、技術委員会副委員長を5年努めました。他、測地学会、砂防学会、雪氷学会、等に所属するとともに、今でも日本写真測量学会、日本地図学会、日本測量協会、GIS学会、土木学会、ASPRS(アメリカ写真測量及びリモートセンシング学会)は会員を継続し、無料配信のISPRS(国際写真測量及びリモートセンシング学会)、GIM International、Geo Week、Geo Connectionからの情報メールも受信しています。日経コンストラクション、日刊建設工業新聞の購読も再開します。
購読誌・紙は、いずれも断続的ですが、地図中心、GIS Next、建設系新聞を購読していたことがあり、予算が許すなら再開したいと思っているところです。
ディジタルマッピング(DM)は、編集システムを自ら開発していたことや少数精鋭であったこともあり、秀でた生産システムを構築できたと思っていますが、受注の構造的な課題があって大都市が終了した後は先細りしていきます。ただ、海外に展開する時期になったとき、一般にはAdobe社のイラストレータを使用する手作業を、2名程度の開発者で自動化し、海外案件は大型であることもあり、課として1億近い利益を出すことができました。当時は子会社制を布いていて、下りてくる経費は受注額の50%でしたので、実態はもっと大きな利益を上げていたことになります。
中山間地域等直接支払制度が開始されたのは、数値地形モデル及び写真地図の作成が発達したことにもよりますが、高度な技術が不要なために安価な海外での生産も助長されました。そのような中、親会社の交代で昇進した役員が、他社の成功例を参考に元外国人社員を独立させて生産体制を強化します。写真地図作成の責任者であった私は、技術の空洞化を産む等の理由から海外生産に反対でしたが、利益にも責任があって対抗せざるを得なくなり半額以下で生産できる拠点を作り育てることになります。
写真地図は、京都議定書(COP3、国連気候変動枠組条約第3回締約国会議で採択された国際条約)による温室効果ガスの排出量の算出にも利用されます。算出の基準年の森林量を測るために写真地図が、3から4年掛けて数社で共同して全国整備されたのです。そのときの発注仕様は建設コンサルが受託して作成したもので、予算を考慮したためか地図情報レベル2500の写真地図を作成するのに、印画紙に焼かれた密着写真を数値化し、2万5千分の1地形図から標定点を取得するというものでした。どだい精度の確保は無理な仕様というだけでなく、空中三角測量の調整計算が破綻することが想定され、費用は掛かりますが、ポジフィルムを使い、標定点はGNSS/IMUを搭載した航空機で1/4,000程度の縮尺で撮影した立体写真から測定することを提案しました。採択された会社の幾つかは発注仕様に固執し、品質が保てないという私の主張によって厳しくなった検査で、再作成を余儀なくされます。一方、信用を得て私は受注量を大幅に増加させました。私が全ての年度で指揮したわけではありませんが、今思うと、国内では最も広い面積の写真地図作成を指揮した技術者となっているかも知れません。
航空レーザの最初の実用分野は、送電線調査でした。解析図化機を使用した送電調査で解析処理の自動化を図っていた私は、航空レーザ計測による方法の開発を支援します。その後、公共測量として航空レーザが利用されるようになると、国土交通省の総合技術開発プロジェクト(総プロ)で航空レーザ測量に関する品質確保検討の主査として指名され、品質確保の仕組みを取りまとめます。ただ、実務では河川等の砂防分野が主で、唯一、洪水対策のための一級河川水域の航空レーザ測量が開始されたとき、狙っていた地区の業務を他社に取られたため、急遽私が関東を取りに行くことになります。当然、提案型の発注で、一度受注すると継続する確率が非常に高く、最後まで主任技師を務めたわけではありませんが、今考えると国内では最も広い面積の航空レーザ測量を指揮した技術者かも知れません。また、この事業では例外的に企業が所持していた生データの版権を、後で国に売らなければならなくなり、最終的には10億程度となって売り上げ及び利益にも大きく貢献しました。
実績の最後に、衛星図化について記載しておきます。入社当時、会社は南米で地形図を作成していて、1986年に図化が可能な初の衛星であるSPOTが打ち上げられると、次の地区で使用することになり、私が図化の担当となりました。そこで国際建設技術協会の委員会へ出席したり、SPOT衛星画像の標定プログラムをWild社に開発してもらって検証したりしましたが、相手国の治安悪化で中断し、再開されることはありませんでした。その後、2000年頃から地上画素寸法1mの民間衛星の打ち上げが計画されるようになり、日本測量調査技術協会にワーキンググループを設置されて私が指揮し、都市計画図の作成への適用を目指しましたが、運用面での課題が多く、実用には至りませんでした。衛星図化は、地形図のディジタル化の後に登場したこともあって、世界的にも地形図作成には活用されていない状況ですが、今思えば国内では衛星図化の先駆者の一人であったといえる気がします。
測量法による作業規程の準則第17条第3項で規定する国土地理院が作成する公共測量のための新しい技術を用いる測量手法のマニュアルは、測量技術の発展だけでなく、測量事業の展開にも大きな影響を与えます。そのため基本測量とは一線を画する地形測量関係のマニュアルは、標準化の活動を主としていた日本測量調査技術協会が請け負って作成していました。設立初期には、ディジタルマッピング(DM)やTS地形測量。私が航測関係の部門長だった時期には、私が主任技師として写真地図、GNSS/IMUによる対地標定、ディジタル航空カメラのマニュアルを取りまとめ、後に作業規程の準則に規定されていきます。その後、公益法人に転籍してからは、意図せず車載写真レーザ測量、地上レーザ測量、地上レーザ点群測量、UAV写真測量のマニュアル作成、航空レーザ測深のマニュアル改正の主任技師を務めました。競争相手の自爆もありましたが、提案型の発注では全勝でした。
公益法人に転籍した頃からは、写真測量による地形図作成を航測会社が担っている時代は終わりに近づいているだろうと思い『デジタル写真測量の基礎』を出版するなどの取り組みを開始するとともに、協力者を募ってUAV写真測量のマニュアルを作成し、5件の第17条第2項の公共測量を支援しました。また、UAVレーザ測量を1件、地上レーザ測量を1件、それぞれ支援しました。この活動は、これらの測量手法のマニュアルが国土地理院により作成(UAV写真測量と地上レーザ測量は私が主任技師)したことで中止しましたが、しばらくの間、助言は継続しました。
準則第17条第2項の公共測量では、地方公共団体からの依頼で「ネットワーク型RTK単点観測法による基準点測量作業マニュアル」も手がけました。
UAVの活用が見え出すと、安全に気を配る必要も実感し、日本写真測量学会では委員会を設立して『測量調査に供する小型無人航空機を安全に運航するための手引き』を取りまとめました。首相官邸屋上で発見され、UAVに対する社会的関心が高まると業界としての取り組みが必要と考え、測量業界主要3団体から構成されるUAS測量調査協議会の設立を主導し『UAV安全運航手帳』をとりまとめて出版しました。
手帳を電子手帳に切り替えるまでは、手帳の表紙裏に『自分の教科書を作れ!』と記載していました。駆け出しだった頃、日本写真測量学会会長(当時)からしばしば受けた訓示です。研究対象は教科書には書かれていなく、自分で書かなければならないという趣旨で、ディジタル化に直面していた技術者にとっても経験知から形式知への知の移転と同じだと理解し、文章化を心がけるようになりました。また、会長主導による技術書の出版に多く携わることができ、その意義も実感することができました。
そして『ディジタルマッピング 公共測量への手引き』(鹿島出版会)、『CAD/CG/GISユーザのための航空・衛星写真画像ハンドブック』(古今書院)、『デジタル写真測量の基礎』(日本測量協会)、『地図情報レベル10000数値地形図図式2017年』(日本測量協会)、『UAV安全運航手帳』(日刊建設工業新聞社)、『-公共測量- 作業規程の準則 解説と運用』(地上レーザ測量、車載写真レーザ測量、UAV写真測量、空中写真測量[ディジタル手法箇所]、写真地図作成、航空レーザ測量、地上レーザ点群測量、UAV写真点群測量。日本測量協会)の出版で主導的な立場で携わりました。
長文をお読み頂き有り難うございました。
昨今の技術進歩は、技術者が、その技術を身につけるよりも早いのではないでしょうか。また、レーザやUAVの登場は、地形測量技術を過去の延長線上にはないものにしています。レーザでは、誰でも簡単に三次元点群データを作成することができますが、三次元表現や差分抽出の領域から先は隘路ではないでしょうか。UAVも見かけ上は航空機と同じで、測量の原理は同じですが、搭載されるセンサーの特性は大きく異なり、従来の処理をそのまま使用することはできなくなっています。まるでカメラが発明された200年前に戻った気もします。
このような状況を超えて地形測量技術を、これから求められる社会に寄与できるよう皆さま(現場)との対話を通じて向上させていこうと考えています。
賛同頂けるようでしたらi地図通信への登録をお願いいたします。一緒に地形測量の価値を高めていきましょう。
2021年9月1日
i地図通信編集室長 津留 宏介
日本測量調査技術協会の受託研究を電子納品に拡張したもの。受託研究で得られた数値地形図の在り方の本質をまとめている。
文章と図表を見開きにした初心者向けの解説書。撮影機器から撮影方法、画像特性、ファイル形式、入手方法、利用方向まで網羅的に解説した。
レーザスキャナの章の編集と航空レーザ測量の執筆を担当。航空レーザ測量については卓越した記述ができた。高価なので図書館を利用して下さい。
写真測量の普及を希求して執筆したが、内容ほど写真測量は簡単ではないことを実感した一冊。普及したSfMの理解には大きく貢献できると思うが、執筆の意図とはズレている。
10000の図式がないという業界からの要望に応えた一冊。これから重要となる地図編集に記載した。類書がない貴重な一冊である。
UAV測量に普及に向けた一冊。関連する技術や法律の専門家から学んだものを咀嚼し、UAVの安全運航に落とし込み、現場で使える安全順守編と知識を蓄える安全知識編として整理した。
地上レーザ測量、車載写真レーザ測量、UAV写真測量、空中写真測量[ディジタル手法箇所]、写真地図作成、航空レーザ測量、地上レーザ点群測量、UAV写真点群測量 の初版を品質確保の観点を重視して執筆。
昨今の急速な技術進歩に伴って多様化した地形測量の成果(地形図、写真地図、陸部三次元点群、水部三次元点群)を整理したB6版の小冊子。